”幸せ”は指標化できるか?

6月2日(木)NHKクローズアップ現代「幸せのモノサシ〜指標作りの模索〜」を視聴。

番組要旨

政府・自治体で、幸せ”の指標を作ろうという動きがある。
経済的・物質的な豊かさを量る指標として従来からGDPがある。しかし、経済的な豊かさは”幸せ”には必ずしも結びつかない。
政府は内閣府で幸福度に関する研究会を発足し、2010年12月から幸福度指標作りに取り組んでいる。
そもそも人は何に幸せを感じるのか?仕事、健康、自由な時間、、、

また、世界各国でも自分たちの国民にとっての幸せとは何かを議論している。
フランスは、余暇や治安を。公害などの問題を抱えるタイでは身の回りの緑を。そして、ブータンではGNH(国民総幸福度)を掲げ、世界でもいち早く、幸せとは何かを位置づけてきた。GDPは世界で161位と経済的に豊かなわけではないが、伝統文化に触れながら素朴な暮らしをすることが何よりも幸せとされる。野鳥のために、電線を無くし、あえて不便な生活をすることを決めた村もある。

では、日本人にとっての幸せとは?
日本では東日本大震災の発生前後で、人々の”幸せ”に対する考えに変化が見られる。
内閣府が行ったアンケートでは、震災後には家族や友人との結びつきの大切さに気づかされたという意見が出た。

研究会メンバーの考える”幸せ”
困ったときに助けてくれる人はいますか?

研究会のメンバー、内田由紀子 京都大学 准教授は、家族や友人などのごく身近な人との結びつきが日本人の幸せの根本になりつつある、と考えている。
欧米との違い
欧米…個人がモノや評価を獲得したか、自己実現したか。
日本…身近な人に支えられているか、つながっているか、その関係性。

社会から認められているという実感はありますか?

研究会のメンバー、社会学者、宮本みち子さんは、ニートや引きこもりの自立支援を続けながら実態を調査してきた。そして、家族や友人だけでなく、社会との結びつきがより重要と考えている。

自治体の取り組み

住民に幸せを実感してもらう政策を行う東京都荒川区

住民の幸福度を数値として表そうと、荒川区総幸福度(GAH)を掲げるが、どのような基準で定めるか?
子育てにおける母親の幸せの指標について、当初は、母親の育児への不安を解消するための子育て支援施設の数としていた。しかし、施設の数や利用者は増えたが、相談が後を絶たなかった。子育ての中の幸せは施設の数や利用者数では量れないと感じていた。

そして荒川区では、別の指標を探りはじめる。地域のボランティア団体が運営する、民家を利用した子育てサロン。地域のお年寄りや主婦がボランティアで子どもを原則無料で預かっている。母親は井戸端会議的に相談もできる。また、地元の大学生などが母親の自宅を訪ね、子育てや家事を手伝うボランティアの支援も行っている。人と人が地域とつながることに着目。今後住民辺へのアンケートで幸せの指標を探る。

感想

”幸せ”の指標化に政府・自治体が取り組んでいるのは、今後どのように国や地域を運営していくかという方向性について、国民に問いかけているのではないかと思いました。

私は、三種の神器が普及した時代やバブル時代の狂気についてまったく知りませんが、テレビで語られる昔話を聞く限り、今後はそのような経済的豊かさからもたらされる”幸せ”は感じられないだろうと思います。もっとも、今現在のほうが三種の神器よりも遥かに洗練されたモノが安く手に入り、バブル時代よりも楽しみは多様化しているので、当時の人たちと比べ、明らかに経済的に幸せなはずなのですが。

価値観が多様化したといわれて久しいですが、その中で国や自治体が国民”幸せ”の指標を作ろうと試みているのは、明確で誰もが納得する答えが出ず、無駄に見えます。
しかし、番組のスタジオトークでゲストの糸井重里さんが、「幸せの指標そのものではなく、幸せとは何かを議論するプロセスが大切ではないか」というようなことを言っていました。

国の借金、地方衰退、自殺者年間3万人、派遣切り、今では原発などの、日本に閉塞感をもたらしている諸問題は、どれも経済的な豊かさを追求するための動機に起因していると思います。そして、どの問題も一向に解決する気配がありません。
ならば、経済的な豊かさの何かを捨てることで問題が解決に向かうことがあるのではないかと思います。
もちろん、今の日本の状態を維持できているのは、経済的に成長していく方向性で国も人も動いているからだというのは間違いないと思いますし、成長を止めて貧乏になったら幸せになれるかというと、そうではないでしょう。

この”幸せ”を指標化する取り組みは、国民は今の日本の状況をどう思っているのかを暗に問いかけ、日本をどうしたいのか、どのように生きていきたいのか、というニーズ調査になっているのではないでしょうか。国民が幸せに感じることを基本に政策などのが行われれば、国民は納得しやすく、国の運営もスムーズに行くようになるのではないかと思います。